月刊 神戸っ子 Vol.513 国際派キランが行く! その1
< 曹 英生 × キラン・S・セティ >
「華僑が中核となりアジアとの交流を」
神戸生まれで、神戸育ちのインド系アメリカ人のキラン.S.セティさん。自らも貿易商を営み、世界中を飛び回る。新連載「国際派キランが行く!」では、ワールドワイドに活躍する方をお迎えして、グローバルな視点からお話いただく。第-回目は南京町商店街振興組合の曹英生理事長をお迎えした
一点集中型の外国人コミュニティづくりを
キラン 現在南京町商店街振興組合には、何店舗ぐらい加入しているのですか。
曹 現在、約100店舗ほどでしょうか。
キラン 私はインド系のアメリカ人ですが、世界中何処に行きましても中国系の華僑とインド系の印僑は必ずいます。華僑は1868年の開港から神戸に来たようですが、印僑は1920年代に入ってきたと伺っています。
曹 華僑の多くは欧米人と一緒に神戸へやって来ましたので、旧居留地の隣に住みました。それが現在の南京町です。私が小学校に通っていた頃、南京町一帯には市場と外国人バーがたくさんありました。中華料理は民生さんたった一軒でした。当時の南京町は本当に怖かったという記憶があります。海外から気の荒い船員さんの姿が多く、雑然としていました。
キラン でも、街にはにぎやかな部分も必要です。
曹 人間はきれいな部分だけでは生きていけません。息を抜くことができるところがないとね。
キラン 日本にチャイナタウンが横浜、神戸、長崎の3つしかないということを知って驚きました。
曹 長崎は、江戸時代の出島から400年の歴史があります。伝統の力というか、蛇踊りのレベルも非常に高い。長崎で蛇踊りを見物して、神戸の春節祭で演舞する龍舞を考えたほど。横浜は、飲食店や物販などを含めると500店にものぼるでしょう。我々の兄貴分といった存在で、春節祭の規模も大きく2週間も開催されています。
キラン もともと横浜にも印僑が多敷おりましたが、関東大震災が起こり、関東に住んでいたインド人が、神戸に避難してきたそうです。そこから神戸に住むインド人が増えたそうです。
曹 私は山本通に住んでいますが、インドの方が多いと感じますね。三宮や北野には、インドの方々に限らず外国人のコミュニティがすでに形成されています。
キラン 震災後、HAT神戸の中に国際交流協会などの外国人を支援するコミュニティ施設が完成し、外国図書や生活にまつわる情報を得ることができるんです。あのような素晴らしい施設は、街の中心部に作ってほしいものです。六甲アイランドに学校を移動させるのもいいのですが、一点集中型にした方が効果的ではないでしょうか。
曹 そうですよ。老祥記の商売みたいに。(笑い)
20年先を見越したバイリンガル教育を
キラン 南京町といえば屋台に何でも揃っているというイメージがあるのですが。
曹 あれも様々な意見がありましてね。屋台だと販売できる料理の種類がラーメンやから揚げなどに限られてきます、中華料理には味しい料理がもっとたくさんありますから、ゆったりと席についていただいて召し上がっていただくことも重要です。観光客が寄ってくださるのは有難いのですが、もっと地元の人に愛される店舗を増やさなけれぱ。
キラン 中国の場合、大陸系と台湾系に分かれますが、理事長として調和を図っていくことは難しいのでは。
曹 我々が通った中華同文学校では、先輩と後輩の秩序や同級生とも仲間意識をもって学ぶことができますから、民族で争うという場面も見られませんでした。南京町全体を見ますと大陸系の方が多いですが、同文学校の影響もあってか、争いもありません。
キラン インドからは日本に来て働く人は中国の方よりも比較的少ないように感じますがなぜでしょうかね。
曹 やはり、中国人と日本人は顔が似ているという点が大きいように思われます。それとよく働いてくれるからというのもあります。外国人学校があるというのも大きな要素でしょう。
キラン 私も長男もカナディアンアカデミー出身ですが、年間で授業料などその他の経費を含めると約200万円もかかります。私には子供が3人いますから600万円近くなります。一生懸命働かなければいけませんよ。(笑い)国際学校への支援をしてほしいものです。
曹 高級車を下取りなしで、毎年買い換えることができますね。(笑い) 神戸の人はもっと英語を上手くなれなければいけない。国際都市なら英語は使えて当たり前でないと。
キラン 神戸だけでなく日本全体の問題ですね、、これから20年先を見て、いまの小学生が30歳ぐらいになるまでに、英語にこだわらずバイリンガルに必ずなるという教育を徹底してもいいように思います。
曹 中華同文学校では、英語の授業で日本語の教科書で、説明は中国語で行ないます。同時に3つの」言葉をトレーニングできるんです。
キラン 日本国民が、日本の教育のあり方に対して不信感を抱いている人も多いのではないでしょうか。自分の長男を近所の小学校に体験人学させました。そしたら、誰も先生の話を聞いていないので、ビックリしました。おまけに走り回っている子供までいる。僕らの小学校の時代では考えられませんよ。あの光景は信じられませんでした。言葉の問題もそうですが、僕の中での国際都市の定義は、町を歩いていてジロジロ見られないという点です。肩をたたいても、何かを答えてくれる人がいるということです。
曹 僕は逆に、お客さんが来れば、まず日本語で話しかけるようにスタッフに言っています。しゃべれなければ、英語や中国語で尋ね直す。国際都市ならそれぐらい出来て当たり前です。
キラン 現在神戸だけで、約8000人が住んでいると伺います。彼らが中核になって、アジアとの交流から新たな国際都市を形成する可能性を秘めていますね。
キラン・S・セティ 1965年神戸生まれ ピッツパーグ大学経営学修士修得。 (株)ジュピターインターナショナルコーポレーション取締役専務。 (社)神戸青年会議所第45代理事長を務めた。
曹 英生 1957年神戸生まれ。1958年、 元町東地域協議会企画委員長 南京町商店街振興組合理事長 (有)老祥記代表取締役