コストコホールセール日本支社長マイク・シネガル氏 (Mr. Michael Sinegal) × キラン・S・セティ (Kiran S Sethi)
神戸青年会議所広報誌 (Japanese Articles from Kobe Junior Chamber,Inc.Magazine ' Wakai Chikara') Wakai Chikara 若い力 No.60より コストコホールセール日本支社長マイク・シネガル氏×キラン・S・セティ Discussion with Mr.Michael Sinegal. President of Costco Wholesale Japan Ltd. on the current trend and future of Japanese consumers and retail trends 'The Hybrid of Retail and Wholesale - The Costco Wholesale Business Model'
倉庫がそのまま店舗に。問屋と小売のハイブリッドな店舗展開をめざして。
コストコホールセール日本支社長マイク シネガル氏に聞く
現在全世界7か国で400を超える会員制ウェアハウスを運営しているコストコホールセールは、1976年に、アメリカカリフォルニア州サンディエゴにプライスクラブ(会員制倉庫型店舗)を設立した。7年後には、ワシントン州シアトルにコストコホールセールが設立され
1993年に合併しプライスコストコとなった。1998年に社名を正式にコストコホールセールに変更。翌年日本における第一号店を福岡県(久山)に出店。2000年には、千葉県(幕張)に、2002年には東京都(町田)に出店し、2003年度には兵庫県に尼崎店をオープンされて、関西にも進出した。
キラン 現在コストコは、目本の流通業界に新風を吹き込んだと脚光を浴びていますね。コストコのビジネスポリシーはどのようなところにあるのでしようか
シネガル コストコホールセールは、店舗でなく倉庫という形で商品を販売しています。ローコスト・オペレーションを目指し商品を入荷されたままの状態でパレットに並べ、不要なディスプレイを施さない店内でまとめ売りをしています。こうすることにより商品陳列の手問が省けるだけでなく、全てにおいて非常に効率的な運営ができます。
シネガル また、ゆっくりとお買い物ができるよう、一部の売場を除きセルフサービスになっております。ご購入いただいた商品のお持ち帰りには商品の空箱(ダンボール)やコストコで販売している布袋をご利用いただくことにより、ゴミを減らし、お持ち帰り用のビニール袋代などを削減しています。これらのことにより、これまでの通常の流通業に伴なう事業経費を大幅に削減できるのです。そしてその節約分を皆様にご提供する商品に還元しております。また、コストコでは国内外の有名メーカーの一番の売れ筋を分析して商品を構成しています。それらの商品を大量に一括購入することにより、それぞれの単価を下げる努力をしています。
キラン コストコでは、販売促進のために何か特徴的な戦略を考えておられますか。また、世界の市場で見られる特徴と日本の市場との相違点はどのようなところにあるとお考えですか
シネガル コストコホールセールは、会員制という形式で商品を販売していることが大きな特徴です。18歳以上で全ての事業所の事業主、社員を対象としたビジネスメンバー(法人会員)と
会社勤めか組合・団体などに属しているゴールドスターメンバー(個人会員)による会貝組織です。年会費制ですが、会員の皆様には2大保証をしています。ひとつめは、会費保証です。万が一ご満足いただけな一い場合、いつでも年会費をお返しいたします。ふたつめは、商品保証です。販売するすべての商品についても、万が一ご満足いただけない場合、現品と引き換えに代金を全額お返し致します。日本で、この会員制は非常に受け入れられており、コストコ多摩境店では、開店後3ヶ月でアメリカで最も会員数の多い店の会員数を超えました。また、コストコのポリシーとして、対象となる市場を中小企業や中間所得個人層に絞り込み、ダイレクトメールを送るなどの戦略によって、非常に高い集客数を得ています。通常、世界中のコストコの会員総数の比率は、ビジネス会員が3分の1でゴールドスター会員が3分の2を占めますが、売上総比率は、逆転し、ビジネス会員が3分の2、ゴールドスター会員が3分の1になります。これは、ビジネス会員が大量買いをしているからといえるでしょう。現在、久山店、幕張店、多摩境店ではゴールドスター会員が半数以上、をしめています。けれども、尼崎店、ではビジネス会員数がゴールドスター会貝数を上回りました。これは、既存の日本の他の3店には見られなかった現象で、コストコとしても大変興味深い事としてとらえています。
キラン 日本には、法律、社会、店舗などの規制が数多く存在しますが、これらの規制を打ち壊したことが、現在の発展につながっているのでしょうか。倉庫がそのまま店舗になっているから、問屋と小売の中間一のような役目を果たしていますね。このような業態は日本にはなかったビジネスといえるでしょう
シネガル コストコは、日本の小売の既成概念とは全く違った手法で商売をしております。日本の小売店は、80%が問屋経由による販売ですが、コストコは問屋を使っておりません。なぜならば、コストコ自体が「ホールセール=問屋」であり倉庫がそのまま店舗だからです。また、中小企業相手に商売をしているため、少量多品目でなく多量少品口でパレットごと商品を購入しています。コストコは、4000坪の広大な売り場面積に商品を4000種類にしぼり、質のいい物を低価格で提供する努力をしています。例えば、世界中のコストコと一括して同じ商品を大量に購入することにより、大幅なコスト削減に成功しています。日本に、問屋が必要でないということでなく、問屋にはコストコにはない利点もあり、コストコは今後も競争していくでしょう。コストコは、ユニークでハイブリッドな業態なので、GMS、スーパー、コンビニなど、一種類の業態に直接影響を与えることのない特殊なビジネスといえるでしょう。
キラン 日本に来られて6年目を迎えると伺っていますが、日本の生活はいかがですか。暮しにくいと思われる点はありますか
シネガル 日本は、とてもユニークな国です。日本の良さはたくさんあり、まず初めに私は、魚、刺身といった日本食がとても好きです。次に、家族と暮らすのにこれほど環境の良い所はありません。安全で、周りの人がとても親切にしてくれます。また、私は日本で暮す事に対する白分への競戟を楽しんでいます。日本文化・日本語を学ぶことで新しい発見ができ、違いを価値観として認めることができるからです、一方ビジネス面で日本に来て感じたことは、営業運営費、土地代、建築費用、光熱費などコストが非常に高いということです。特に光熱費はアメリカの3倍です。法律に関わることは、規制に従い、一度クリアしてしまえは問題のないことなのですが、
このコストが高いという問題は、ずっと続いていくものであり非常に解決しづらい困難な問題です。逆に、意外だと感じたことは、日本でもコストコで売られている大きなパッケージの商品がとても好評だということです。また輸入商品もとてもよく売れるということが日本に進出する前の予想と反しました。したがって、ボーダレス・グローバルな時代では、消費者の好む商品はどの世界でも同じであるという事がわかりました。
キラン GMの元CEOであるジャック・ウェルチ氏は完壁主義者で、組織の中では能力のない者はクビにするほうが組織全体にとって良いという考え方があります。マイク・シネガル氏の経営ポリシーというものはどのようなものでしょうか
シネガル 通常日本のスーパーでは社貝が10~20%、アルバイトが80~90%だと思われます。
しかし、コストコでは、フルタイムの社員が50%、アルバイトが50%の構成になっています。コストコはやる気のある人を雇用し昇給、昇進させていくことがポリシーです。当然、勤勉さ・賢さということも必要ですが成績の仲びない社員をすぐに解雇することなく社員1人1人と向き合い、話しあい、一緒に解決法を見付け出すことが重要です。一緒に考えて適材適所に人を配置し、そこでキャリアを作っていきます。私も、現在、日本におりますが、アジアでのキャリアを作るためのワンステップだと考えています。人と人との交流もキャリアアップにつながる大切な要因であり、
その考え方や経験が将来の成長に役立つと思います。
キラン 2003年には関西初上陸として尼崎店がオープンしました。なかなか健闘されているよですね。神戸での出店は考えられませんでしたか
シネガル 神戸進出には、大変興味があります。ポートアイランド2期など、検討はいたしましたが条件を満たす事ができませんでした。しかし、今後、条件を満たす場所があれば前向きに検討していきたいと思います。
キラン・S・セティ (2003年度 社団法人神戸青年会議所 第45代理事長)
マイク・シネガル氏 コストコホールセール日本支社長