(社)神戸青年会議所 創立45周年記念座談会 『混迷の時代 神戸JCの進む道』 Kobe Junior Chamber 45th Anniversary memorial Discussion
Wakai Chikara 若い力 No.59より Kobe Junior Chamber inc' 45th Anniversary memorial Discussion with the First and most recent Past presidents 'The History and Future of Kobe Junior Chamber,Inc'
(社)神戸青年会議所 創立45周年記念座談会
『混迷の時代 神戸JCの進む道』
【座談会出席者】
初代理事長 秋田 博正 先輩
神戸シニアクラブ代表世話人 増田 兵右衛門 先輩(第32代理事長)
第41代理事長 瀬戸口 仁三郎 君
第42代理事長 寺本 督 先輩
第43代理事長 樽本佳郎 先輩
第44代理事長 中山広隆 君
第45代理事長 キラン・S・セティ 君
コーディネーター 有持 繁氏(神戸新聞社・取締役/マーケティング室長)
有持 神戸JCのスタートは戦後神戸の復興に重なります。そして、その神戸が、震災を経験し新たな転換期を迎えています。JCで使われる「変革」という言葉には、「若い世代が社会を変えていくのだ」という、内側からの強い意思があります。しかし、混迷を深める現代では外部からも「変革」の主体としてのJCが期待されています。本日は、20~30歳代のころにもどってお話しいただければと思います。まずは瀬戸口さんより、在任時のエピソードを交えながら、新しいJCが地域で果たすべき役割についてお話しください。
瀬戸口 私が理事長となった1999年は、震災から4~5年たち、震災復興と切り離した多面的な展開を求められる年でした。40周年記念の提言を活かし、震災以降に盛り上がった市民活動団体との関わりや市民活動分野での青年会議所活動を模索する、という点に力をいれました。JC活動には、NPO(市民団体)的な側面と、青年経済人としての側面の2面があると思います。これまであまり扱われてこなかったNPO的な側面に一度トライしてみようと考えたのです。具体的にはNPO法人の立ち上げや地域の人との座談会を企画するなどの活動を行いました。効果が1年ですぐに現れる、といった性格の活動ではありませんが、今も活動の主旨は引き継がれていると思います。今は、全国的にJC活動の見直し時期だと思います。方向性を見失いつつある今、これからの活動をどうするのか
きちんと見直しておかなければ、地域の中で認知されることは難しいと思います。
有持 市民活動団体のサポートという「変革」の一つの形が瀬戸口理事長の時にはじまったといえます。JCが地域の中で市民活動団体としての役割をどう担っていくのか、新たな実験の始まりでした。
寺本 私は理事長を務めた際、「神戸をどうすれば再生できるのか」
ということを念頭におきました。その想いから「崖っぷち神戸再生フォーラム」などの活動を通じて、「神戸の停滞している現状を我々の力で何とかしよう」と取り組んできたわけです。しかし、振り返ると、今は自分たちの地域のことのみを考え、各地のJCが同じような地域再生を言っている場合ではない時代に変わってきた気がします。日本全体の活力や、国際競争力が低下する中で、青年経済人の集まりであるJCにも違った役割が求められていると思います。この役割に応えていくためには、JCの3信条のうちの「修練」という要素がもう少しクローズアップされるべきだと思います。今の日本の閉塞感は、経済において失敗を恐れたり、起業家精神が萎えているところに原因があるのではないでしょうか。青年会議所会員が、次代を担う経済人として、起業家精神をもち、多少のリスクがあっても、新しい事業を立ち上げていく力強さを持つためには、我々は何をすればよいか。青年会議所の中での「修練」を通し、起業家精神を切磋琢磨していけるよう、考えるべきではないでしょうか。
有持 活動全体のスキルアップを図るという点からも、地域だけにこだわりすぎてはいけないという点からも今年の「Think Globally, Act Locally. Creating Leaders for Positive Change」という理事長方針と重なっていると思います。
樽本 私が理事長を務めたのは2001年で21世紀の始まりの年だったこともあり、過去諸先輩方が築かれてきた素晴らしい伝統を大切にしつつ、今の時代に合うように改革していこうと考えました。そして、メンバーのスキルの向上が神戸経済の発展の礎となる、という考えのもと研修に力をいれました。例えば、例会の講師を選定する際にも、人に聞いて人選するのではなく、自分たちで一度その方の講演を聞いてみて、いいと判断すれば推薦してもらいたい、ということを徹底しました。各委員会でそれぞれの事業の意義・目的を理解し、丸投げすることなく自らが汗を流しながら実行していくことでメンバーの意識も変えられ、資質の向上にも繋がると考えたのです。これまでJCは政策集団として、数多くの提言を行ってきましたが、過去の提言をもう一度見直し、その中で今の時代にあった提言を具現化していく時期ではないでしょうか。
有持 樽本さんは、最重要課題を、日常の活動での自己研鑽とされていたのですね。
「ケーブルカー型の観光バスを神戸に」など、神戸青年会議所が提言したことが具体化した例は多くあります。過去の提言の中から今なら実現可能な提言が確かに見つかるでしょうね。
中山 昨年は「夢の方程式~21世紀この街の仕組みを今、創る」というテーマで一年間活動しました。事業を考えるうえでのポイントは2つありました。国際都市神戸の再評価から新しい考え方が見いだせないか。単年度の組織という条件のなかでできることはないか、といことです。そう考えていたとき、タイミングよく神戸祭りの開催時期の変更をきっかけに、「みなとまつり」を立ち上げることができました。みなとの再評価が新産業づくりにつながればよい、という想いでした。単年度組織のいい側面(魅力)を活かすべきです。急速な変化のなか若い会員の活動の場や方法は変わっていくのですから、現役メンバーが自ら企画するなかで、毎年の事業がうまくいけばそれでいいのだと考えています。継承するべき活動を多く残せばよい、という話ではないと思います。
有持 20世紀とは違う仕掛け(方程式)づくりが重要。震災を契機に、民間主導のまちづくりが求められるようになりました。みなとまつりも、官主導の「神戸まつり」に対する民間からの答えだと捉えられますね。
キラン 理事長をお受けするにあたって、まずはこれまでの44年間を検証したうえで、50周年につながる何かを残したいな、と考えました。私は神戸で生まれ育った外国人として、神戸のいい部分を引き出す努力をしていきたいとの想いを今年のテーマにこめたつもりです。世界的な視野を持ちながら、具体的に地域に何かを残せる活動をしていくつもりです。一般的にJCにおいては、ビジネスを目的とした活動は避けてこられました。そこで私は、経済的な発展に寄与することも重要な責務だと思いますし、経営者の修練(トレーニング)を通じて、ベンチャーや新規事業のきっかけを作りたいと考えています。
また、青年会議所メンバーだけではできないことがありますので、ネットワークを新たに構築することも大きな課題だと思います。他の経済団体をはじめとしてこの地域にある色々な団体と手を組み、この地域を魅力的なものとするにはどうすればよいか考えていきます。これらを含め、「青年会議所の付加価値が何なのか」をもっと表に打ち出していこう、と思っています。
有持 JC活動の根幹はメンバーのスキルアップとネットワークづくりである、ということでしょう。増田さん、この5年間をご覧になって後輩にアドバイスを頂けませんか。
増田 自分が理事長であったころを振り返って考えてみますと、確かにこの5年間で今のJCの一人一人にスキルアップを目指してきた成果が現れているように感じます。100年の大計を考えると、今は折り返し地点にさしかかり、長期的な視点でJC活動を検証する時期だと思います。
そして長期的に見ると、青年会議所の一番ベースになるのは、やはり継続する思想ではないでしょうか?経済人として知識ばかりの頭でっかちになるのではなく、市民活動の担い手であるという一番大切なことに目を向けると、人間同士の関係に踏み込まざるを得なくなります。そのためには、論旨の通った話をしなくてはなりませんし、年代別に様々な考え方があることを理解することも大切です。若い人にとっては苦手とすることかもしれませんが、逃げずに緊張感を持って人間と関わらなくてはならないのです。JCは上下左右の人間同士の関わりあいを大切にする組織ですが、友達のようなつきあい方に変わりつつあるような気がします。緊張感がないほうが入会してもらいやすいと考えている人がいれば、それは勘違いです。緊張感をもったメンバーでなければ、100年の大計にたって議論することはできません。それが原点でないか、と考えています。一年一年の活動に対する緊張感があったからこそ神戸JCが45年つづいてきました。
これからも緊張感を持ち続けなければ、50年や100年を迎える組織はできないと思います。
有持 「修練によってスキルアップした人間が奉仕し、その奉仕仲間が友情に基づくネットワークをつくる」と考えるべきなのでしょう。増田さんからお聞きしたのは、地域のために事業をするリーダーとなり得る自分たちをつくっていくことが重要で、それがなければ青年会議所は100年も市民活動の担い手たり得ないのではないか、という厳しい指摘でした。キランさん、そうした若い経営者のスキルアップのため、青年会議所は何ができるとお考えでしょうか。
キラン まず、JCの修練を通じて、枠を超えたクリエイティブでユニークな発想ができるようになると思います。また、縦横のネットワークがメンバー内はもちろん、いろんなところでできることも
青年会議所の魅力ではないでしょうか。そして経営者の視野を広げ、新しい発想をビジネスチャンスもしくは、社会貢献につなげる場を時間をかけて提供する役割も、青年会議所は担えると思います。
中山 40周年のころ、ある事業についての議論に対して、秋田初代理事長に次のようにご指摘いただいたことを思い出します。「何を肩を張っているんだよ。JCは仲間を作ることが基本だよ。ある価値観をもった人が集まることで仲間ができ、仲間がいるからこそ様々な議論が出てくるし、面白いJC活動ができるんだよ」仲間を作るための事業であり、その場をJCが提供している、というお考えでした。私も個人的にスポーツに関する勉強会をしていますが、これも仲間がいるからこそ発想できることです。卒業しても地域に貢献するときの仲間はやはりJC。どんな事業をすればよいか、という捉え方ではなく、その時代にあった事業を通してどれだけ深い仲間づくりができたか、という捉え方が大切ではないか、と思います。
有持 みなさんの話の根幹にあるのは、どういう事業がよいか、ということを考えると同時に、
その議論を通じてどのように修練し、どのようにネットワークを作っていくのかが大切だ、ということでしょう。「結局は人である」と言い換えることができるかもしれません。
寺本 JC活動を通じて色々なことを先輩に教えていただきましたが、今思えば、それぞれの事業の成否よりも、事業実現までの、社会人としての物の考え方を教えて頂いたり、スキルを培って頂いた昔のJCの厳しさが、増田先輩もおっしゃっていましたが、事業を進める中で対内対外の人間関係を一から作った経験も他に代え難い財産ですし、何十回も練り直させられた厚さ3~4cmにもなるような事業実施計画書を作り、事業を進めたことなども、今すごく役に立っています。そうした先輩から受け継いだ視野の広い視点、考え方、緻密な事業の進め方や、妥協を許さない厳しさを、後輩のメンバーに伝えることができたか、少し気になっています。
樽本 私も、上下の意識が希薄になっているという増田先輩のお言葉にははっとさせられました。確かに、「事業は人ありき」が大前提ですが、ただの仲良し集団になってしまってはいけません。私も現役メンバーの時、全く事業を知らない人が読んでも理解できるほど詳しい実行計画書の書き方など、先輩から教わったことが今も役に立っています。だからこそ、そういう厳しさが今のメンバーには伝わっていないのではないか、と心配になることがあります。過去の先輩の姿を踏まえて、今のメンバーに活動してもらいたいと思います。
有持 みなさんのお話をお聞きになって、秋田初代理事長はどうお考えになりましたでしょうか。
秋田 今、みなさんの立派なお考えを聞きまして、本当に感心いたしました。神戸JCは、いい会員といい理事長に恵まれ、本当に幸せだと感じます。青年会議所の活動には、トレーニングと、活動そのものに通じたすばらしいメンバー間の切磋琢磨があります。神戸青年会議所に、45周年という時期にそれを改めて認識し、これからもその力がずっと続くようにと願います。
また、初代理事長として、かねてから「こういうJCであってほしい」と感じていたとおりの組織になっていることに、先輩として心強く思っています。鋭いところもあり、たくましいところもある立派な神戸青年会議所の会員には、どんな事態でも乗り切れる力があると思います。JCメンバーとつきあっていると、自然と「自分もやらねばならない」と感じます。例えれば、大学の体育会のようなものでしょうか。後輩は先輩を立て、先輩は後輩を思いやる、すばらしい人間同士のつながりと、健康的な風潮があります。毎年メンバーが交代し、事業内容は変わっても、先輩と後輩が互いに気を配りながらいい仲間として活動するという基本の部分はしっかりもちながら、若々しくがんばってもらいたいと思います。
有持 青年会議所は経済団体という枠にとどまらず、市民活動団体として飛躍することが求められています。NPOなどへの支援活動をいち早く開始した神戸青年会議所にはその力があります。また、青年会議所が「修練」の場であることも再確認できました。その修練が新たな事業とネットワークづくりにつながり、「民」がリードする新たな社会づくりにつながります。45年周年を迎えた今年度は、こうした活動を昇華して「世界に通用する地域主義」という方向とともに、その担い手として青年経済人の育成「Creating Leaders」をテーマとして活動しています。一方で「変革」してはならないものもあります、それが青年会議所の素晴らしい伝統です。先輩から後輩に伝える経験という財産であり、適度な緊張感をもった人間同士の関わりです。色々な事業や修練の場を通じて神戸JCの一つのカラーが作られていますが、生み出す事業や活動は変わっても、45年継承されてきたこのカラーを持ち続けてほしい。それが、諸先輩方からキラン理事長に贈るメッセージなのだと感じました。最後になりましたが、現理事長ならびに50周年に向けてのエールのお言葉などありましたらお願いします。
樽本 キラン理事長、ぜひ頑張ってください。私は今まで多きなLOMの50周年記念式典に数多く出席しましたが、一度も初代理事長が挨拶されたのを聞いたことがありません。秋田先輩におかれましては、お身体をご自愛いただきまして、神戸JC50周年記念式典では是非ご挨拶頂きたいと思っております。
秋田 自粛自重します(笑)。
キラン 理事長という大役をご経験された先輩方が、様々なご活躍と経験に裏打ちされたメセージを後輩にお伝えになることそのものが、青年会議所のすばらしいところだと感じました。
またいただいたお言葉を現役メンバーに伝えるという、私に託された責任を重く受け止めました。