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【October, 2004】 月刊 神戸っ子 Vol.520 国際派キランが行く! その3

中内 潤× キラン・S・セティ

ネアカ、のびのび、へこたれず。社会に開かれた大学で「人財」を。

 

流通を科学するという理念のもと、ユニークなカリキュラムで産業界のニーズにあった人材を育成する流通科学大学。2003年には、中内 潤氏が理事長に就任。2007年の創立20周年に向けた方向性などについて伺った。

 

「就社」から「就職」へ人間性を育てる大学

 

キラン 理事長になられて一年半が経ちました。いかがですか。

 

中内 私の場合、ビジネスの世界からの転身でしたので、教育現場独特の雰囲気に当初はやはり戸惑いもありました。大学では教員・職員・学生で、それぞれの世界があり、価値観も異なるわけですが、それらをどう融和して大学全体のエネルギーに高めていくのか、それが私の役目です。大学は学生の才能、豊かな人間性を育てる場です。教職員はそれに協力する。それも明るく元気にやってほしい、といつも言っています。 また「開かれた大学」といいますが、これは社会に対して開かれてなければ意味がありません。そうでなければ社会に対する発言もできません。そういう意味で公開講座、学校施設の開放などには力を入れ、決算もすべて公表しております。

 

キラン アメリカの大学では寄付を求められれば、その使途を透明にすることを皆が求めてきます。それでなければ誰も寄付などしません。

 

中内 企業の人事担当者などに話を聞きますと、最近の学生は躾が全くなされていないと言われます。 私自身感じることは、入学した大学一年生の中には、高校四年生の気分の人たちが多いように思います。 それでは社会人としての自覚はいつ出てくるのかと見ていると、就職活動を始めだしてやっとなのです。それも、うわべだけで中身の伴わないものです。本学では、まず一年生の間に読み、書き、そろばんなど、いわゆる実社会に対応できる基礎能力をみっちりとやってもらおうと思っています。流通科学大学を卒業する人には、最低限の社会マナーを身につけていてほしいのです。

 

キラン いまの時代、それは大事なことですよね。社会でも、家庭でも、様々な価値観が生まれ、良くも悪くも多様化し、ある意味今まで以上に混沌としている時代です。そこで教育の担う役割は重要になってきていると思います。

 

中内 自由には責任があるということを覚えてほしいのです。企業とのネットワークを広げていくなかで、いま企業はどのような人材を求めているのかをよく聞きます。ほとんどの人事担当の方は、知識は入社後につければよいと言うのです。それよりも躾、人間性の構築といったことは、入社以前にやっておいてもらわなければ困るとおっしゃるのです。またいまの学生は「就社」ばかりを考えています。良い会社に行くことが目標になってしまっています。そうではなく、学生には目的を持って「職に就いて」ほしいのです。われわれも、そんな「就職」ができるように指導していくことが大切だと思います。

 

キラン アメリカでは初対面で自己紹介するとき、必ず「会社名ではなく、「エンジニア」や「営業マン」などと自分の仕事を言います。日本では逆ですよね。まずどこに勤めているかからはじまります。

 

中内 卒業までに、社会に出て恥ずかしくない人間を育成するためにも、礼儀作法、躾、読み書き、そろばんなどは大切な基礎だと思っています。アメリカの大学などでも厳しいところはあるのでしょうか?

 

キラン 私はノートルダムを卒業したのですが、ここはカトリック系の学校で、もともと厳しい家庭で育った学生が多かったのです。僕は寮に入っていたのですが、ここの寮長さんが牧師さんで、お酒を飲んでも、帰りが遅くなっても、何をしても怒られていましたね(笑)。でもこういった大学はアメリカではかなり珍しいですね。 ニューヨークなど都心部の大学ほど、自由な雰囲気は強いですね。

 

中内 我が国の学校教育は、永い間、知識を植え付けることに熱心でした。受験戦争に見られるように、より多くの知識を獲得した人が優秀とされました。しかし、知識というものはそれ自体ではあまり役に立ちません。知識を「知恵」に転換できる力があって初めて実社会に生きてきます。それをわたしたちは“実学”と呼んでいます。大学の四年間は、知識を知恵に変えることを学ぶ力を養う四年間であって欲しいのです。

 

キラン 学生時代におもしろい試験がありました。いままで使った教材をすべて持って来いというのです。そして試験期間中に調べて答えろというのです。これは覚えるより難しかったですよ。調べる以上、正確に答えなければなりませんし、時間が限られているなかで、膨大な資料のなかから探し出さなければなりませんでしたから。おっしゃるように今の時代は、知識をどうすれば手に入れることができるかという知恵がもっと大事なのですよ。つまり「Know Who」です。大学の四年間は「考える」ことと「人的ネットワークの構築」に力を注ぐべきだと思います。

 

できてこその教育 「人材」は「人財」

 

中内 私どもでは、いま「流通」という言葉を再定義しようとしています。変貌する社会のなかで流通を考えた場合「流通とは人々の生活を豊かにする社会システム」だと思うのです。そういう意味では地球規模の社会システムです。

 

キラン 世界的に物の動きが簡単で、ダイナミックな流通が発展すればするほど、日本の複雑な流通もなくなっていくことでしょう。それにしても日本の大学は、アメリカと比べると留学生が少ないですよね。留学生は貴重な人材です。留学生を増やしていくことで、一層のグローバリゼーションが可能になると思います。

 

中内 留学生は世界中からきて欲しいのですよ。そのためにもうちの大学そのものがしっかりしなければなりません。私は「人材」を「人財」といつも書いていますが、大学教育の使命は今後の知恵社会に対応できる能力を持った「人財」づくりにあると思うのです。人は宝ですから。学園長がよく言う言葉で「ネアカ、のびのび、へこたれず」というのがあるのですが、私はこれが大好きなのです。これを大学運営のキーワードにしようと考えています。私が目指しているところは、卒業生が自分の子供を流通科学大学に行かせたいと、思ってくれることなのです。そのためにも我々は“面倒見の良い大学”を目指しています。面倒見とは学生に迎合したり、手取り足取りして教えるのではなく、厳しく教育して、その学生の将来に面倒見が良い大学にすることです。

 

キラン いまはそれが求められていることだと思いますよ。

 

中内 自分の経験上でも、怒られたことほど社会で役に立っています。私の大学時代のゼミはとても厳しいところだったのですよ。授業はスーツで出席しなければなりませんでしたし、ひとりずつに先輩がついて、ネクタイの結び方が悪ければ先輩も呼び出されて怒られるのです。加えて週二回レポート提出が決められていましたからね。何度も辞めようと思いましたよ(笑)。 教授は「辞めたい奴はいつでも辞めろ」と言っていましたから、悔しくて辞めませんでしたけどね。(笑) また、いま流通科学大学は、クラブの加入率が42パーセントです。私はこれを50パーセント以上にしたいのです。クラブ活動を通して、先輩後輩との関係や、人間関係に必要なものを学ぶことができ、学生の満足度も高まりますからね。

 

キラン いま話題にもなっています「坂田ジュニアゴルフ塾」でも、先生が同じように先輩と後輩両方を叱っていますね。 そうすることで双方に責任が生まれてくるのでしょう。

 

中内 持論ですが、教育とは「できて初めて成り立つ」ものだと思うのです。教えてそれで終わりでは教育になりません。 学んだことを使えてこそのものだと思うのです。そう考えると、例えば、これまでの日本の英語教育はおかしいですよね。 話せるようにならなければ、語学の意味がありません。コミュニケーションのための語学なのですから。

 

キラン いますぐというのは難しいと思うのですが、十年後に二十歳になる日本の子供たちは、二カ国語以上のバイリンガルであってほしいですね。

 

流通分野世界一のオンリーワン大学へ

 

中内 二〇〇七年には創立二十周年を迎えるのですが、もっと先、五十周年に向けての夢を語っていきたいのです。 私たちはもう生きていないかもしれませんが、五十年後にどういう大学になって欲しいかを考えておくことが必要です。 これからの時代「何で生きてる大学」かという特徴がなければならない。

 

キラン 五十年後、日本の状況、アジアの状況など考えてみるだけでも楽しいことですよね。 流通科学大学は神戸の大学である以上、これからの「神戸のあり方」についても、ぜひ提案していってほしいですね。

 

中内 私は神戸で育ちました。昔から思っていたのですが、大阪は何かにつけて東京を意識しますが、神戸には他の都市への対抗意識が弱いのです。その分、独立心が強い。ただ震災後、その自信が揺らいでいるのだと思います。 いま一度、もともとの神戸の姿に立ち戻ってほしいのです。 「神戸のまちって何?」と問い直せるようなプロジェクトが必要だと思います。

 

キラン 神戸には、神戸の付加価値が必要です。これからを考えると、流通・医療・IT産業がキーになってくると思います。いまは世界の流れそのものが大きく変わりつつある時です。それだけに流通科学大学への期待は大きいものです。

 

中内 震災でつくづく感じたのは、物の流れが止まることの怖さです。まさに流通は人の幸せそのものを支える、創り出すものなのです。わが神戸にある流通科学大学は「面倒見の良い大学」であり、「オンリーワン大学」になりたいと考えていますが、特にオンリーワンという意味では、この「流通」分野に関しては世界ナンバーワンを目指していきたいのです。また、就職に強い大学との評価もいただいていますが、教育改革を通して、さらにビジネス偏差値の高い学生を輩出したいと思っております。 大学とは「学ぶ幸せを教える機関」なのですから、それを忘れずにやってまいります。

 

 

キラン・S・セティ
1965年神戸生まれ
ピッツパーグ大学経営学修士修得。
(株)ジュピターインターナショナルコーポレーション取締役専務。
(社)神戸青年会議所第45代理事長を務めた。

 

中内 潤(なかうち じゅん)
1955年岡山県生まれ。1976年慶應義塾大学法学部を卒業。
1980年(株)ダイエー入社。専務取締役、副社長などを歴任。
2003年学校法人中内学園(流通科学大学)理事長に就任。

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