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月刊 神戸っ子 Vol.518 国際派キランが行く! その2

< 南部 靖之× キラン・S・セティ >

「神戸人がもつDNAを忘れてしまっていないか?」

神戸生まれで、神戸育ちのインド系アメリカ人のラン.S.セティさん。自らも貿易商を営み、世界中を飛び回る。新連載「国際派キランが行く!」では、ワールドワイドに活躍する方をお迎えして、グローバルな視点からお話いただく。第二回目は神戸発ベンチャー企業の旗手として、ワールドワイドに活躍するパソナグループ 南部 靖之代表をお迎えした

広く世界に目を向ける教育が大切

南部 いま若い人たちが自信をなくしてしまい、夢を追うのではなく、目の前の利益に振り回されている人が多いように思います。それは寂しいですよね。

キラン 目標がないというのもあると思のですが、失敗を恐れさせるような教育と社会になっていることが大きいのだと思います。 昔は「失敗は成功のもと」という事をよく聞かされましたが最近は聞きませんね。今アメリカの教育者の間で話題になっていますが、人間を測る指標はIQだけでなくFQ(FAILURE QUOTIENT)失敗度合いだと聞いております。

南部 僕もEQの次にSQだと言ってきたのです。Sはスピリットです。IQ、EQ、SQすべてが集まってパーソナリティができあがるのです。日本の若い人たちにとって、日本の教育は問題だと思っています。若い人たちに勇気を与えるような教育ではなく、ひとつの評価基準だけで教育をしてきたのです。人間の価値は個々に評価しなければなりません。算数で100点を取るのも、走るのが速いのも、絵が上手いのも、みんなそれぞれに才能です。価値観の多様性ということを、僕は母親から教わりました。ところが日本の場合は、勉強ができるかできないかだけで価値が決まってしまいます。これまでの時代は、それが通用したのかも知れません。しかし国際的な視野で考えると、それでは駄目なのです。人というものに対して、あらゆる面で価値観の多様性や感性の豊かさが必要です。

キラン わたしはインターナショナルスクールに行きましたが、創造性や勉強のやり方を教わりました。しかしアメリカの大学に入ると一日一課目につき最低2時間の勉強が必要で必ず宿題が待っていまして、びっくりしましたよ。

南部 僕は35歳からアメリカに行ったのです。震災が起こった42歳の年まで向うにいました。そして去年まで、家族はアメリカに住んでいました。真ん中の子がいま大学に行っているのですが、アメリカとは入試制度そのものが違うのです。アメリカでは失敗しても、年に何度か入試のチャンスがあります。日本のように一年に一回、一斉に試験を受けるようなものではありません。そしてアメリカでは高校時代までの、クラブ活動やボランティア活動などの内容が、入試の合否に大きく関わってきます。いくら試験の点数が良くても、人間的に問題があれば試験にはなかなか通りません。それといちばんわかりやすい違いは、日本の子供に「なぜ勉強するのか?」と質問すると、ほとんどの子が「良い学校に入りたいから」と応えます。ところがアメリカの場合は、同じ質問でもほとんどの子が、「学校で自分の才能を広げてもらいたいから」と応えるのです。その才能で食べていかなければならないという、自立のための勉強なのですよ。日米のどちらが正しいかという問題ではなく、広く世界に目を向けてほしいのです。

神戸が持つDNAをもう一度思い出してほしい

キラン 行政も神戸市民も、みんなが一緒に協力して神戸から優秀な人材を輩出していかなければならないと思うのです。私は神戸で生まれ育ったのですが、やはり神戸が好きです。神戸に住んでいる外国人に、「東京にいた方がビジネスチャンスも人脈も広がるのになぜ引っ越さないの?」とよく聞くのですが、やっぱり神戸は日本でいちばん住み易いというのです。先日ある統計を見ていたらスイスのバーゼルが世界で一番住み良い街と明記されていました。私も神戸は将来、アジアのスイスになる可能性があると思っています。

南部 神戸が「世界の神戸」となる可能性のひとつとして、関西圏は、世界でも珍しいほど世界遺産の多い地域なのです。神戸を中心にして、地中海に匹敵するほどの遺産を持った地域なのです。世界の観光地となる土台を持っているということを、みんな認識しなければなりません。神戸に夢を持てないという人がいるなら、それは夢の実現のために努力をしていないからだと思うのです。神戸市民はそれを自分たちでつくれるのですから、神戸の十年先のあるべき姿を確信して、みんなでそこに進むべきなのです。実現可能な夢を持つことが、未来につながるのです。ただ、いまは行政を含めて、誰も十年後の確信を言い出せないでいるのです。

キラン 神戸でもそういう動きはあるのですが、いろんな方と議論し具体的にしようと努力しております。大きな価値観としてクオリティ・オブ・ライフというものが掲げられているようですが、本当の意味での神戸らしいオリティ・オブ・ライフとは何かということを構築していく事が必要かも知れません。

南部 例えばただ「2階に上がりたい」というのと、「2階に上がってぼた餅を食べたい」という意志を持つのではまったく違ってきますよね。

キラン 明確なビジョンがなければ動きにくいのが現状ですよね。会社でもビジョンが明確にあることが大切なことです。また、それを正確に全員に伝えることが必要です。具体的な神戸の将来像が打ち出せればよいですね!

南部 神戸は開港からいろいろな文化が生まれてきました。神戸文化のDNAは何かと考えると、それは「革新」なのです。サッカーもゴルフも、映画も革新があったからこそ生まれたのです。最近は、神戸のDNAを市民が忘れているのです。新しいDNAをつくるのではないのです。思い出せばいいだけなのですから。

神戸に人が集まる仕組みをつくることが今後のヒント

キラン 南部さんはIT専門家の派遣業にも力を入れていますよね。インドではIT業界が破竹の勢いですが、いま日本のIT業界はどのような状況なのですか?

南部 日本とインドには100年を超える関係があります。本来の日印関係は、強く深いものです。僕は、インドは日本を最も理解している国のひとつだと思っているのです。

キラン 性格上似ているところはありますね。

南部 だからこそもっと交流を深めるような政策を日本政府には望んでいるのです。

キラン 神戸には約1000人のインド人が住んでいます。日本に長期滞在しているインド人がいちばん多いのが神戸だとも聞いております。大手外資系企業は東京に集中しているので短期滞在者は関東地区の方が多いかもしれませんね。

南部 インドの素晴らしいIT技術者から技術を学べる、大学院大学のようなものが必要だと思っているのです。せっかく性格の似ている国民なのですから、教育から交流を深めていきたいと思うのです。文化的な違いは教育でカバーできます。民間レベルでの教育が神戸でできればいちばんいいと思うのです。

キラン 神戸には外国人向けの教育など一般的な生活文化が整っているので住みやすいところがたくさんありますよ。経費的な部分で見てもインド系のIT技術者に取っても神戸の方が住むにはコストパフォーマンスが高いかと思いますので集まるような環境が出来れば面白いでしょうね。

南部 神戸空港に合わせて、大きな運動をやりたいですね。

キラン 受け入れ先企業が神戸だけではビジネスとして成り立つか少し不安ですので、神戸から派遣できるしくみが出来れば可能性が広がるでしょう。南部 神戸に強いリーダーが出てくれば、神戸出身のOBたちが、みんな神戸に戻ってきますよ。そのための仕組みづくりをしなければならないですね。

キラン それこそが、十年先の神戸のビジョンをつくるヒントになりそうです。南部さんは今後の10年、どのようなビジョンを持っていますか。

南部 僕はフリーターが日本を支え、変えていくと思っているのです。昔は「プータロー」と呼ばれていたのですが、坂本龍馬もいわば「プータロー」のようなものですから。組織に属さない個人でも収入が得られる社会を作り上げていかなければならないのです。2020年には雇用という言葉さえ消えているかも知れないですよ。しゃべれなければ、英語や中国語で尋ね直す。国際都市ならそれぐらい出来て当たり前です。

キラン 現在神戸だけで、約8000人が住んでいると伺います。彼らが中核になって、アジアとの交流から新たな国際都市を形成する可能性を秘めていますね。

キラン・S・セティ

1965年神戸生まれ

ピッツパーグ大学経営学修士修得。 (株)ジュピターインターナショナルコーポレーション取締役専務。 (社)神戸青年会議所第45代理事長を務めた。

南部 靖之(なんぶ やすゆき) 1952年神戸生まれ。

1976年関西大学工学部を卒業。 大学在学中に起業。新たな雇用インフラを提案し続け、現在パソナグループの代表ならびに関東・関西雇用創出の代表として、業界や企業の枠を超えた雇用創造に力を注いでいる。

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