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月刊 神戸っ子 Vol.499より

<福井 有 × キラン・S・セティ >

「自分が生まれ育ったまちに何を提言できるか」

米国でMBA(経営学修士)を修得された福井有先輩とキラン次年度予定者。お二人が学んだ南カリフォルニア大学とノートルダム大学は、早稲田と慶応のような関係だったと話す。そんなお二人に神戸に望むことを伺った。

まちづくりに大切なのは 個人のアイデンティティ

福井 まちのアイデンティティと、個人のアイデンティティを一緒に育めるのが、JCの良さだと思うのです。自分が生まれたまち、自分が育ったまちに対して、何を提言できるかということを考えなければならない。日本人はどちらかというと、行政に「してもらう」という人が多い。自分たちでまちをつくっていくこと、そしてそれは自分の人生とってどういう意味があるのか考えなければならない。神戸のまちを、自分のまちとしてまちづくりをすれば、それだけ自分のまちが良くなります。それは個人のアイデンティティの延長にあるのです。いまはこの不況な時代です。時間とお金を使ってわざわざJCに参加してもらうには、昔よりも目的をはっきりさせないと難しい時代に入ってきたと思います。

キラン 地域開発に関しては、僕も福井先輩と似ている部分があります。JCで一泊理事会というのがよくありますが、効果的に時間を使うためにまちなかでやって終わったら帰ればいいというエンドレス理事会をしたのです。そこでみんなに自分の委員会なり、自分の事業として、地域に対してどんな貢献ができるのかを書いてくれと言ったのです大雑把なことではなく、具体的なことを書いて、あとからそれについて考えて欲しかったのです。これはみんなの意識が高まるひとつの要因になればと期待しているのです。

福井 神戸JCの活動と、他のJCとを比べたとき、神戸の弱点は継続性がないことです。それは何故かとずっと考えていたのですが、自分の反省点として、世界会議をやったことにより、その準備のための5年間はまちづくりが止まっていたのです。当然世界会議は、神戸から発信する絶好のチャンスだったのですが、ゴールデンアニバーサリーが目玉となっていたのです。そこに神戸のアイデンティティを入れなければならないと思ってはいたのですが、千載一遇のチャンスを逃してしまいましたね。残念だったと思います。まちづくりにとって大切なのは継続性と独創性、それと住民参加と自立の原則。これらが総合化して風土にならなければならない。ところがいつも理事長が替わる度に、総合化はされても風土化はされていかない。それは1年ごとに理事長が替わる短期化の弱点だと思います。常に活性化はするのですが、継続性はなくなってきます。祭りなどは楽しければ良いのですが、政策には継続性が必要です。

キラン 継続的な部分で、いま我々が課題にしていることがあります。今年の7月20日に「みなとまつり」を立ち上げたのですが、来年はまた開催することが決まっています。問題は「みなとまつり」を一つの型にして再来年につなげていけるかどうかが、

地域開発にとって重要だと思うのです。これからのことを踏まえて、いま神戸に何が必要かと考えると、物質的なものより、心のゆとりが重要だと思うのです。そのためにはまずメンバーの心から変わらなければなりません。神戸にとっていま大事なのは医療産業都市構想という新たな試みでしょう。どのようにこの構想をビジネスにつなげていくか、その橋渡しは非常に難しいと思います。まず教育の部分が強くなり、クリェイティブな人間が育つような教育ができれぱ、医療産業都市構想は成功するはずです。

福井 この大変な時代に300人を越すメンバーがJCにいるということは、彼らがその構想に主体的にどう関われるかを研究することに意義があると思うのです。まちで感じる心の豊かさをみんなで考えることができるのが、JCの良さです。ひとりでいても考えられないし、動けないですからね。何を求めるかと言うことをもっとわかりやすくすることが重要でしょうね。それで一度面白さを見いだせれば、それが神戸モデルとして、神戸JCの活性化につながると思います。

キラン JCに参加している目的は、結局のところ、会社や家、自分に何を還元できるかということだと思うのです。そのなかで自分に持って帰れるものとして、友情は必ず持って帰れるでしょう。家族に持って帰れるものとして、僕は家族の交流を企画する委員会をつくったのです

福井 「会議は短く、友情は長く」というのが僕のフレーズだったのです。JCは定年がありますから、辞めてからのつきあいの方が長いのですよ。それと家族のことで言うと、国際会議などでもファミリープログラムは必ずあります。海外の連中との会議でも、タ方からはファミリープログラムが必ず用意されているのです。そういうことも当然であるということを学ぶのも、国際化のひとつです。

キラン そこには目本の文化的な部分があって、会議の場ではフォーマルなディスカッションをして、終了後に本音のディスカッションをして結論を出すことが多いですよね。外国人と接するときは、ある程度、根回しをした上で、はじめから本音で話さなけれぱ、飲んでいるときに仕事の話を持ち出すと、「そんな話は止めてくれ」と言われることもあるでしょう。

福井 本当の意味での国際都市であろうとするなら、ホテルの1階にビジネスセンターがあり、無料で24時間インターネットにつなげなければ駄目ですよ。それさえいまの神戸にはない。当然地球の裏側から来た人は、自国の時間でアクセスしたいのですよ。国際人が来て、そのビジネススタイルに対応できるようにしていなければならない。それは空港でも同じです。

キラン 海外から神戸のことを知らないお客さんが来て、ショッピングしたいと言っても、どこに行けばいいのかわからないですからね。まちに英語は当然のこと、何カ国語かの標識があるだけでも違いますから。まずはそこからですよね。

キラン・S・セティ ピッツバーグ大学経営学修士修得 (株)ジュピターインターナショナルコーポレーション取締役専務。 2003年度、45代理事長予定者。

福井 有 ふくい ゆう 1951年生まれ。慶応義塾大学商学部卒業後、 南加大学ビジネススクールにて経営学修士修得。

大手前学園副理事長。大手前犬学副学長。

91年に33代理事長を務めた。

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