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月刊 神戸っ子 Vol.502より

< 角田 嘉宏 × キラン・S・セティ >

「緑に憩う ウォーターフロントを ストック&イノベーションの時代へ」

地元企業を中心に、特許関係の代理人としての業務を展開する弁理士の角田嘉宏氏は、魅力ある街づくりを目指し様々な分野で活躍する。街の資源を再利用することで付加価値の高い街づくりを行うことが肝要だと話す。

実験団体として地域に貢献するJC

角田 僕は、JCはある意味で実験団体だと思っているのですよ。仲良しクラブなら他にもあります。楽しむだけが目的なら、ゴルフクラブをつくればいいのですから。社会のために何かをしなければ意味がないのです。楽しむのではなく、事業をやることで友情が生まれるのだと思っています。

キラン JC活動の目的の中心は地域を活性化しながら、我々がどのように貢献していけるかです。メンバーそれぞれに、何のために活動するのか、自分の行動は地域にどう貢献しているのかを、明確に事業計画に反映してもらいました。具体的に書くとなるとなかなか難しいことです。しかしそうすることでみんなの意識を共通化して、視野を広げていきたいのです。ひとり一人のポジティブチェンジで、神戸が変わっていくはずです。それと経営の面にも重点を置いています。モチベーションアップの手段として、これまでタブーとされていたメンバー間のビジネスを、あえてオープンにしていくことによって、互々のチャンスも広がっていく。

角田 コミュニティディベロップメントはJCの最終目的だと思います。しかしJCの事業費はたかだか知れていますよね。だからこそJCがやるべきこと、できることは実験なのです。デスクワークとテストを繰り返し、これが正しいと証明されれば、公表すればいいのです。それこそが若い力ですよ。おじんにはできません(笑)。勉強だけなら学者に任せておけばいい。若い人の強さは行動力ですから。僕の時代には、小学校をコミュニティセンターにしようと考え、浜山小学校で毎週イベントをしていました。日本文化を育んだのは、部落杜会です。地域杜会の共同体意識を守らなければと考えたのです。小学校には地域の人たちが集まるための土台があります。これもひとつの実験ですよね。

キラン いまの神戸に文句を言うのは簡単なことですよね。僕は神戸の魅力的な資源を、もう一度再確認してほしいのです。負債のことぱかりではなく、資産の見直しが大切ですよ。あとニューベンチャーを育成するシステムが必要ですよね。京都などではそれがうまく機能しているように思えます。神戸にも可能性はたくさんあるはずですから。そのためには既成概念を取り外した考え方が必要になってくるでしょう。僕が思うコミュニィディベロップメントは、「楽しくやろう」なのです。昨年には「海に感謝」というテーマでみなとまつりを復活させていただきました。今年もさらに祭を拡大する予定です。神戸の海と港の良さを再認識してもらいたいのです。楽しい地域開発をすることで、お金も人も動きますからね。

港に森をつくる新しい神戸の港

角田 まちにとって、住みやすいこと、働きやすいことは重要です。神戸は外国人にとっては、本当に住みやすいまちだと思うのです。だからこそ、P&Gという大企業も神戸に来ました。そして神戸JCも、外国人のキラン君が理事長になることに、みんな何の抵抗もないのですよ。

キラン 私は仕事で日本全国様々な土地に行きますが、ターバン姿で歩いていて、物珍しそうに指を指されないのは、神戸と六本木だけなのですよ(笑)。神戸にとってはそれが自然なことなのですよ。私も子供の頃よく遊んでいた近所の友達は、日本人以外にも、いろいろな国の人がいましたから。

角田 いま神戸ウォーターフロント開発の座長をしているのです。研究会の取りまとめは終わりました。ハーバーランドからHAT神戸までを含めた約5キロの開発です。いま第1から第3突堤は、ほとんど使われておらず、倉庫も空いたままのものが多いのです。使われていないにも関わらず、市民は海辺を歩けないのは問題だと思うのです。海辺を整備し、もっとうまく活用すれば、デートスポットにもなる場所なのですから。

キラン ウォーターフロント開発とみなとまつりを融合させれぱ、さらに大きな事業へと発展していきますよ。

角田 中突堤の根本あたりでは、空き倉庫が活用されてきているのです。これをさらに東に延ばして、賑やかにしていくべきなのです。第一突堤には緑も必要です。賑わいを興すためには、ある程度の人口が必要ですから。その第一歩として海辺に森をつくりたい。生活文化のインフラからはじめなけれぱ何も広がりませんからね。

キラン いまの時代は、元からあるものに付加価値を加える時代だと思うのです。ビジネスでも同じこと。

角田 つくっては潰す、スクラップ&ビルトの時代は終わりました。いまは資源を有効利用するストック&イノベーションの時代なのです。

医療産業都市構想と神戸空港成功の鍵

角田 1960年頃から2000年までの約40年ほど、日本は基本的にIC、メカトロニクス、コンピューターなどの産業で儲けてきました。しかしいまそれらの技術にアジア諸国が追いついてきています。いまの日本には新たな先端技術の開発が必要なのです。バイオテクノロジー、ナノテクノロジーと呼ばれる分野です。これは神戸市の医療産業都市構想と密接に関係してきます。

兵庫では播磨のスプリングエイトが注目されていますが、これも医療産業都市構想とリンクさせることは、十分に可能だと思います。いま神戸には先端医療産業センターができています。また先端産業の会社が、ポートアイランドに28社も集まっています。これをどう産業につなげていくかがこれからの課題です。

キラン 僕は神戸で育ちました。だから常に、育った環境がさらに住みやすい環境になるために考えているのですよ。ITや医療の専門家など、様々な知識をもっている外国人に住んでほしい。

角田 医療産業都市構想による国際化を図るためには、もっと仕掛けが必要でしょうね。どういうホスピタリティで、外国の人を迎え入れるのかということが重要なのです。まずは市のハードウェアから変えていく必要があります。まちの標識から何とかしなければならないでしょうね。

キラン 前々から思っていることなのですが、まちの案内はせめて4カ国語はほしいですね。これを徹底していくだけでも、随分と外国人の暮らしやすさは違ってきますよ。

角田 それとまずは国際法務専門家を育成しなければならないでしょう。神戸には国際弁護士がひとりもいないのです。国際性があるまちといいながら、これではいけないですよね。

キラン 国の課題もあります。震災のときにも問題になりましたが、日本の医師免許がなければ、外国の医師は日本で診察ができないのです。医療産業都市構想を成功させるためにも、特区として神戸だけは、外国の医師が仕事をできるような環境をつくっていきたいですね。

角田 それには医師会の反対もあるでしょうが、病院を限定するなどすれぱ可能でしょうね。病院も将来は株式会杜化が可能になると思われるので。様々に変化していくグローバル多様化に対処していくことが、まちの住みやすさにつながっていくのだと思います。

キラン 神戸には外国人が生活するためのべースがあります。どこよりも早く、そういった環境づくりができるはずなのです。

国際化と言っているうちは、国際化をなしとげていないのではないでしょうか。

角田 神戸空港の問題も、いろいろと言われていますが、僕は150万都市で空港は成り立つはずだと思っています。それに医療産業都市構想に空一港は絶対に必要です。定期的にチャーター便を飛ばすことからはじめて、将来的にはアジア便をつくらなければならなくなるでしょう。

キラン 神戸空港は特に神戸以西に住んでいる人や、三宮で会杜をしている人にとっては、便利になることは目に見えていますからね。あとはビジネスとして成り立つかどうかは、どこまでコストを抑えることができるかにかかっていると思います。管理費や維持費をどう抑えるかです。形式にとらわれるのではなく、神戸の地の利を生かして、柔軟な発想で空港を機能させていきたいですね。

キラン・S・セティ ピッツパーグ大学経営学修士修得。 (株)ジュピターインターナショナルコーポレーション取締役専務。 2003年度、(社)神戸青年会議所第45代理事長。

角田 嘉宏 昭和12年生まれ。1962年関西大学大学院法学研究科修了課程修了。 有古特許事務所所長/弁理士。 神戸経済同友会代表幹事などを多数歴任。

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